教科書で出会った文学を、手のひらでひらく。紙の仕掛けカード「手のひら文学」

Collaboration: 株式会社美生社
Project: 手のひら文学「吾輩は猫である」
Industry: 印刷 / 紙製品 / 文具・雑貨
Category: Product / Artwork / Illustration / Graphic Design
Scope: コンセプト設計 / 商品企画 / アートワーク / イラストレーション / グラフィックデザイン / 製造打ち合わせ
Print / Manufacture: 株式会社美生社
Event: ペーパーサミット2026
Year: 2026

印刷会社と一緒に考えた、小さな文学のプロダクト

大阪・西成区の印刷会社、株式会社美生社さんとのコラボレーションで、紙の仕掛けカード「手のひら文学」を制作しました。

今回のプロジェクトは、美生社さんから紙を使った立体的な仕組みをご提案いただいたことからスタートしました。

その構造をどんな体験にできるかを考え、企画したのが「手のひら文学」です。

コンセプトは、「教科書で出会った名作を、手のひらでひらく。」

学校の教科書で一度は出会った文学作品を、覚えるための教材としてではなく、“あの頃読んだ言葉”にもう一度出会う入口として届ける商品です。

「吾輩は猫である」の世界を、紙の中に

商品化した作品は、夏目漱石の『吾輩は猫である』。表紙には、本の上で眠る猫のイラストと作品名をシンプルに配置。

開くと、作品の紹介や本文の一節を読みながら、猫と主人、本棚、原稿用紙、インクなどで構成した情景へとつながっていきます。

文学作品を単にイラスト化するのではなく、「読むこと」と「紙をひらくこと」がひとつの体験になることを意識しました。

昔読んだ作品の一節に触れ、絵を眺め、その世界を手のひらでひらく。

そこから「もう一度読んでみようかな」と思ってもらえるところまでを、この商品の体験として考えています。

美生社さんの製造技術と、アートワークを行き来しながら

今回の商品づくりでは、最初から完成形が決まっていたわけではありません。

美生社さんに紙の立体構造や製造方法をご提案いただきながら、

「どこを立ち上げると奥行きが出るか」「開いたときに人物や猫がどう見えるか」
「イラストをどの位置に配置すれば、ひとつの景色として成立するか」

などを相談し、何度か打ち合わせを重ねながら形にしていきました。

私がコンセプトやアートワークを考え、美生社さんが紙の構造や製造の視点から調整する。

そのやり取りを行き来しながら、平面だったイラストが、開いた瞬間に奥行きを持つプロダクトへと変わっていきました。

デザインする人と、紙を加工し形にする人が一緒に考えることで生まれた商品です。

読むためではなく、文学と再会するためのもの

「手のひら文学」は、作品全文を読むための商品ではありません。

一節や情景に触れることで、「昔、教科書で読んだな」「この作品、もう一度読みたいな」と記憶が戻ってくる。

そんなきっかけをつくる、小さな紙のインテリアカードです。

コンセプト設計では、「ひらく → もどる → 残る」という体験を設定し、読む時間がない大人が、好きだった文学に戻るための小さな時間を届けることを考えました。

本棚やデスクに飾ったり、言葉や文学が好きな方への贈りものにしたり。日常の中でふと文学に触れられる存在を目指しました。

ペーパーサミット2026で発売

完成した「手のひら文学」は、「ペーパーサミット2026」で発売しました。

来場者による全50商品の人気投票では、マイベスト部門3位、アイデア部門3位、デザイン部門6位となり、各部門34票、合計102票をいただきました。

その後、堂島アバンザにある「ギフショナリー・デルタ」のポップアップでも販売していただけることになりました。

美生社さんと一緒に構造を考え、試作と調整を重ねながら一つの商品にし、実際に人の手に渡るところまでつながった今回のプロジェクト。

企画、アートワーク、印刷・加工、販売までが一本につながった、ものづくりの面白さを感じられる仕事になりました。


PROJECT CREDIT

Project: 手のひら文学「吾輩は猫である」
Concept / Artwork / Illustration / Design: 豊島夏海
Collaboration / Structure / Print / Manufacture: 株式会社美生社
Event: ペーパーサミット2026
Sales: ギフショナリー・デルタ
Year: 2026